公開日: 2023/08/25
道の駅巡りの相棒となったスズキ「エブリイワゴン」がベース車のキャンピングカー
そのうちに訪問エリアもだいぶ広域になってきました。相変わらずプライベートの大半を道の駅めぐりに費やしていましたが、遠方に行くとなると、どうしても金曜日の夜にクルマを走らせ、仮眠して翌朝から道の駅をめぐるスタイルになります。結構身体もしんどいな、と思っていた頃、あるタイプのクルマが話題になっていました。軽バンをベース車にしたキャンピングカーです。
近所にあったビルダーに見に行ったら、ちょうどいい展示車があったので、即契約。手足を伸ばして横になれる空間があるだけで運転疲労の軽減になり、「これでどこへでも行ける」と東へ西へ、走らせました。24時間使えるトイレや駐車場という、道の駅の利便性を再認識できたのも、このクルマに出会えたからこそ。
道の駅を巡る旅のスタイルが変わり、現在も乗り続ける愛車になりました。
さらにSNSで知り合った道の駅仲間の存在も大きかったです。
オフ会に参加したり駅長に会いに行ったり、さまざまな話を聞く中で、道の駅が「場」としての楽しみだけでなく、「人」との出会いも繋いでくれました。そうして得た情報は誌面の企画や情報の更新の際、とても役に立ちました。私は道の駅に関する情報を集めることに益々夢中になっていったのです。
新しい道の駅ができたら現地を見にいかないと気が済まない
普通は数年編集長をやったら、配置転換で別の部署に行くのでしょうが、結局新サービスの立ち上げに伴って書籍が廃刊になるまで15年間編集担当を続けました。
ここまでやり切ればライフワーク、天職と呼んでも過言ではないですよね。そして「この魅力を伝え続けていきたい」。そう考えて2022年、長年勤めた会社を辞め、独立しました。
情報収集や動画編集など、旅に出ていない時はデスクワークが中心
「道の駅キュレーター」。耳慣れない言葉ですが、独立を決めたとき、名乗ろうと思って温めていたオリジナルの肩書きです。前述した通り、道の駅にはさまざまな特徴や個性があり、一言では語り切れない奥深さもあります。その「数多ある道の駅情報を収集、整理して共有する仕事があってもいいじゃないか」と思ったのが、この仕事を始めたきっかけです。
そのためには、まず全国全ての道の駅の訪問を達成しなければならないと、残っていた道の駅をおよそ1年でめぐり、2023年6月に当時開業していた道の駅1200カ所全ての訪問を終えました。編集長になって道の駅めぐりを始めてから、実に17年の月日が経っていました。
2023年6月、奈良県「吉野路 上北山」で1200駅の訪問を達成
長い時間を要したことで、良かったこともあります。2023年、道の駅は制度施行30年を迎え、その役割や機能に大きな転換期が訪れています。
特に地域防災や子育て支援など、これまでの観光一辺倒の考え方から変化してきています。一度訪問した場所もこういった考えのもと、リニューアルされ、全く新しい施設に生まれ変わることも少なくありません。その変遷を見てきたことで、“地域にとってどんな意味を持つ拠点なのか”考える視点が得られました。
でも、あまりに機能が多岐にわたりすぎていて、いまだに「道の駅とは何か」を説明するの、苦手です(笑)。
キュレーションは「収集」「分類」「再構築」「共有」などのプロセスで行います。入浴施設を例にやってみましょう。
まず、施設がある場所を収集し、露天風呂の有無で分類。その魅力を露天風呂から見える景観で再構築して、紹介します。シンプルなほど作業はしやすいですが、稀に突出した特長を持つ施設が混じったりします。
川根温泉の露天風呂からはSLが見られる
画像出典:川根温泉
例えば静岡県島田市の「川根温泉」。大井川を見下ろす景観が有名ですが、実は露天風呂から鉄橋を通過するSLを見ることができます(2023年8月現在、家山駅~千頭駅間運休中)。
キュレーションの面白さは、同じ条件下でも地域性が加わることで、より輝きを増す提案ができること。そんな道の駅ほど何度も足を運びたくなります。