公開日: 2021/05/21
これまで15年間に渡って、キャンプ場を巡りながら長期で旅をする「北海道キャンプ旅」をライフワークにしてきました。キャンピングカーを購入したのも、「子供を連れて、より安全・快適に北海道を旅したい」という思いからです。
最初に北海道を旅した時に3歳だった長女は、現在大学生。0歳で3週間の北海道キャンプ旅を経験した長男は、現在中学生。子供たちは、北海道の旅を通して、たくましくまっすぐに育ちました。
今回のテーマは、我が家の北海道キャンプ旅の「はじめの一歩」。キャンプ場を巡りながら初めて北海道を旅した、2006年夏のエピソードについてお話します。
長女が誕生して3歳になった頃、「子供と一緒に過ごす時間を大切にしたい」とファミリーキャンプを始めました。最低限のキャンプ道具をそろえ、足りない装備は家にあるもので補いながら、初めてのキャンプに挑戦。無邪気にはしゃぐ長女の姿と妻の笑顔を見て、ますますキャンプの魅力にのめり込み、それからは毎週のように家族でキャンプを楽しみました。
初めて北海道を旅したのは、キャンプデビューのわずか2か月後。キャンプ熱の高まりと共に、「最高のロケーションでキャンプをしたい」「家族でキャンプ場を巡りながら旅をしたい」という思いが抑えきれなくなり、ミニバンにキャンプ道具を満載して東京から青森港まで夜通し走り、クルマごとフェリーに乗って函館に渡りました。
3歳の娘を連れての長期旅、しかもキャンプ場でテント泊をしながらの旅ということで、事前調査や準備は念入りに行いました。家族の安全を重視して、宿泊場所は24時間管理人常駐のオートキャンプ場に限定。幼い子供に負担をかけないように、1カ所のキャンプ場で2泊以上することを基本ルールとしました。
キャンプ道具を満載したミニバンで函館港フェリーターミナルに降り立ち、最初に訪れたのは「白石公園はこだてオートキャンプ場」。函館市街から30分ほどの場所にある、110サイト・450人収容可能な高規格キャンプ場です。
美しく管理された芝生の区画サイトにテントとタープを張り、キャンプ場をベース基地にして函館観光を満喫。函館山や教会、ベイエリア倉庫群、函館朝市、五稜郭タワーなど、主要観光スポットをほぼ網羅して、海鮮丼などの名物グルメも食べ尽くしました。
朝から晩まで忙しく動いて函館観光を満喫できた半面、この2泊3日で旅に関する重要な“気づき”がありました。それは、観光を重視すればするほど、最初に思い描いていた「北海道キャンプ旅」とはかけ離れた、ツアー旅行のようになってしまうということ。
この経験を活かして、以降はなるべく観光を欲張らず、キャンプ場に滞在する時間を多く確保することを心がけました。
函館の次に向かったのは、洞爺湖。途中で買い物や寄り道をしながら国道5号線を北上して、4時間ほどかけて宿泊地の「グリーンステイ洞爺湖」にたどり着きました。
眺めがよく周囲のテントとも離れているベストサイトを選び、テントやタープを設営して“自分たちの基地”を作ります。虫が多いので、出発前に購入したワンタッチタープ用のメッシュを装着して快適なキャンプ体制を整えました。
キャンプ場内を散策したり、湖で水遊びをしたり、温泉街まで足を伸ばして日帰り温泉を堪能したり、湖上を船で移動しながら打ち上げられる洞爺湖名物の「ロングラン花火」を鑑賞したり……。食事は、すべてキャンプ場で自炊。函館での経験を活かしてキャンプ場で過ごす時間を重視したので、やっと「北海道でキャンプをしている」実感が湧いてきました。
洞爺湖の撤収日は、北海道に来てから初めての快晴。青空を眺めながらテントやタープをクルマにしまいこみ、次のキャンプ地に向けて朝9時に洞爺湖を出発しました。
青い空、白い雲、大きく広がる農村風景、鮮やかな緑に染まった山々……。北海道ならではの雄大な景色を眺めながらぜいたくなドライブを楽しみ、石狩市の「道民の森 一番川オートキャンプ場」に到着しました。
携帯電話もつながらない、深い山の中にあるこのキャンプ場。最寄りのコンビ二やスーパーまでは、山を降りて約20kmも走らなければなりません。買い出しに行く途中で目の前を横切る2匹のキタキツネに遭遇して、家族で大興奮! これぞまさに、北海道キャンプ!
滞在した2泊3日は、キャンプ場でのんびりと過ごしました。キャンプ場のすぐ脇を流れる一番川で水遊びをしたり、中が空洞になった神秘的な老木を「トトロの木」と名付けたり、幼い娘と自然豊かな場内を散策するのが一番の楽しみでした。
旅のラストを飾るのは、中富良野にある「星に手のとどく丘キャンプ場」。富良野に移住したオーナーがコツコツと作り上げてきた、“秘密基地”のような場所です。今では予約が取れないほどの人気キャンプ場になりましたが、当時は富良野らしいゆったりとした雰囲気に包まれた、喧騒とは無縁のフィールドでした。
視界いっぱいに広がる大きな青空、穏やかな田園風景、生まれて初めて見る真っ赤に燃える夕焼け、そして漆黒の夜空いっぱいに瞬く満点の星空……。キャンプサイトに放牧された羊を追いかける娘の笑顔、名物の絶品ジンギスカンを頬張る妻の笑顔、そこにはいつでも家族の最高の笑顔がありました。そして、いつの間にか自分自身も、これまでにないほど穏やかな気持ちになっていました。
言葉にできないほど、楽しくて幸せな時間を過ごしたキャンプ場での4日間。ここで経験した至福のキャンプライフは、それ以降の我が家のライフスタイルを決定づける大きなターニングポイントになりました。
最終日、「星に手のとどく丘キャンプ場」を出発して苫小牧からフェリーに乗り込み、旅の思い出をかみしめながらゆっくりと現実の世界へと戻りました。
北海道滞在中、バイクや自転車で旅をしている人たちを見かけるたびに「すごいなぁ」と客観的に思っていましたが、あるとき「自分も妻と3歳の娘と一緒に、テント泊で道内を回ってきた “旅人”なんだ」と、ふと気づいてうれしくなりました。
テント泊にこだわったおかげで、観光ツアーでは見えなかった部分や、ホテル泊では感じられなかった空気を存分に味わえた2週間。初めての北海道キャンプ旅は、自分の人生観を根底から変えてしまうほどの、素晴らしい経験でした。
これが、現在まで続いている我が家の旅の “始まり”です。
■連載:"キャンピングカーの聖地"北海道でクルマ旅
・【vol.1】北海道の魅力と"キャンピングカーの聖地"である理由
・【vol.2】15年以上続く我が家の北海道キャンプ旅「はじめの一歩」
・【vol.3】キャンピングカー納車1週間、0歳児連れで3週間の北海道キャンプ旅を敢行!
・【vol.4】旅先での素敵な"出会い"が北海道キャンプ旅の原動力
・【vol.5】北海道を旅する最大の目的は「最高のロケーションでキャンプをする」こと
・【vol.6】長男と男同士で過ごした1週間の北海道キャンプ旅
・【vol.7】家族との旅を長く続けるために、我が家が取り入れた旅のスタイルとは!?
・【vol.8】北海道キャンプ旅で遭遇した"最大のピンチ"のハナシ
・【vol.9】大好きなキャンプ場で1週間、最高に幸福な時間を過ごした話
・【vol.10】北海道キャンプ旅で出会った"忘れられないワンシーン"
・【vol.11】我が家の北海道キャンプ旅の「始まり」と「これから」